2003.5.1

◆◆◆ モロッコという国 ◆◆◆

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  モロッコにはタイルでできているモスケ(アラブの寺)がある。
  有名なやつなどはキレイで立派すぎて、私はあんまり魅力を感じなかったけど、市場の出口の近くなどにひょっこりあるような小さなやつは、タイルがところどころはげ落ちていたり、かけていたりして、その前をロバが通ったりして、そんな素朴で乾いた感じが、質素だが逆に力強い。モスケ以外でも、その辺の建物の窓の形や鉄柵、防犯用のコンクリートに直接埋められた割られたビン達、夕方に点灯する裸電球の集まりでつくられた街灯。どれもこれもふるぼけて、どこかひび割れていたりして、何ともいえない風味が出ている。
  そんなものどもで出来ているその街は、今あたしのいる所から遙か遠く、友達にもなかなか会えないのは本当に残念な事だ。
 自転車に乗っている時、たまに乾いた風がふいたりすると、モロッコからきた風かもしれないと思ったりする事がある。

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  何年か前にパリから旅行でモロッコに行って以来、その後のパリ留学生活も一変した程に私はアラブ世界にはまってしまった。

  一番最初に行ったのはマラケシュからアガディー(日本でいうと伊勢あたりか?)と隣町のタガズッツ。写真はこの村のクリーニング屋のウィンドウ。なんでかピストルで脅してる、しかもこの子が着てるように見せるために後ろにベスト吊ってます、ずれてるけど。。。


  マラケシュでは「どこからきたの?」とモロッコ人に日本語でしゃべりかけられ、友人が「どこって言うても知らんと思うわ」と答えると「オレ、谷町におってん、9丁目」。。。流暢な大阪弁、おみそれいたしやした!
  パリに帰って2週間後、私はどうしても戻りたくなってまた行った。
   マラケシュでサンドイッチを買おうと混んだ店先で並んでいると、前の人が買い終わって振り返ったら、あの大阪弁男。私の顔を見て「まだおったん?!」。。。「うううん、また来てん」


  その後、何度か訪れた。慣れが出てきて、あまり感動しなくなってしまったが、相変わらず乾いた土のニオイがして、いつも何かしらおかしな事が起きた。


  カサブランカ演劇祭のオープニングパーティに行っていた時、あたしは大好きなビンのコカコーラがあったので(モロッコのコーラはとてもおいしい、日本の辛気くさい炭酸のゆるいのとはえらい違い)飲もうと手にとったのだが、栓抜きがみあたらない、ボーイははるか遠く、一緒にいたヒンドゥという友人の妹も一生懸命に探してくれていた。その様子を見ていたらしい一人の松葉杖のおっさんがいた。
   大勢の人で混み合っている会場に入ったとたん、実は私の目はその人に釘付けになっていた。その人は会場には少し不似合いで、どう見ても食料めあてに紛れこんだような雰囲気で(あくまで想像です)、しかし、そんなことよりも、とても混み合った会場で、あたしなど、1歩進むのも大変だったのに、その片足を失っていた人は誰よりもすばやく、しかも優雅に、するすると動き回っていた、松葉杖で!
   そして、その人は、コーラのビンを持って立ちつくしている私の側に来て、ニカッと笑い、私の手からコーラをもぎとり、シュポッと何と歯で開けてしまったのである!ヒンドゥもびっくりして口をポカンと開けていた。私は、なんてかわいい人だろうと、驚きと感謝で思わず手を握り「メルシーメルシームッシュ!」と何度もお礼を言った。


  タクシーに乗った時に、中でタバコを吸ってもいいかと運転手のじいちゃんに尋ねたら、「わしアレルギーあるからダメ」って言っていたのに、しばらくしたら、おもむろに両方の鼻の穴にティッシュをつめて、「マドモアゼル、もう吸ってもいいよ」と言ってくれたりした。

  うさんくさく、したたかな、お金目当ての変な奴もいて、いつもどこまで信用していいのかさっぱりわからないから疲れるのだが、かわいい人も多いのだ。

   何度も知らない人にお茶をおごってもらった。一度、お前の番だ、という事で払わされた。
  バスの時間を聞きに行ったら停留所の待合いのおっさんが、食べてる最中のその昼ご飯を一緒に食べていけと言った事もあった。
   いったい、なんなん?この人達!

  何もかもがカラッとした大地にウソのようにおもしろく謎めいて存在していて、人々は眼光するどく、あたしには全員チンピラのように見えるのだが、実は普通の人で、皆これでもかという程にカッコつけずに生きているような気がした。

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  パリに戻ると、パリはいつも相変わらずパリだった。
  でも、 そこには、お洒落でシックなパリではなく、アラブ、アフリカ、東欧、インド、中国、ベトナム、その他あたしの知らないものなど、いろんなものを含み、混沌とした街があった。
  そして前よりもパリが好きになった。

  しかしこんな話しをパリのモロッコ人に話すと、そんな事にあった事ない!とおなかを抱えて笑うのだ。
  どーなっているのだ?!

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